周囲を巻き込むギャンブル依存症

依存症は、何らかの行為をしたり何かを摂取したりする事に対して抑制ができない状態になる病気です。
依存症の対象になるものにはいろいろとありますが、ギャンブルの場合にはギャンブル依存症と呼ばれます。
ギャンブル依存症になってしまうと、ギャンブルをしていないと心が落ち着きませんし、お金がないときには借金をしてでも賭けようとします。
そうした行動がエスカレートしていくと、仕事も家庭も維持できなくなり最終的には社会活動をすることが難しくなります。

一般的にギャンブルというのは非常に悪いイメージが持たれており、ギャンブル依存症になるのはだらしない性格をしている人だと思われています。
しかし、最初に触れたように依存症というのは歴とした病気であり、誰でも発症するリスクがあることを世間の人々はもっと知らなければいけません。

では、ギャンブル依存症とはどのようなメカニズムで発症するのかを、詳しく見ていきましょう。
まずギャンブルをしたとしても、簡単に依存症状がでるわけではありません。
日常生活の中に、引き金になる出来事が潜んでいる事が多いです。
例えば仕事や家族間でのトラブルであったり、金銭的に困窮しているといった事情を抱えていったことです。
そのように強いストレスがかかる状況にある人は、苦しい状況から抜け出したいという欲求を抱えています。
そんなときにギャンブルをすれば、結果が出るまでに勝てるかどうかわからないというスリルを味わえます。
そして運良く勝てたときには、非常に強い達成感が生まれて、脳内では神経伝達物質のドーパミンが大量に分泌されます。
そうすると、日頃の苦しい状況は脳裏から消えてとても楽しい状態になります。

その楽しい記憶が、ギャンブルをして楽しくなりたいという欲求を生み出します。
もちろん、ギャンブルですから、勝つこともあれば負けることもあります。
そこで大負けをすれば、借金を背負い非常に危険な状況に陥ってしまいます。
そこできっぱりとやめられたらいいのですが、陰鬱とした気持ちを解消するため、負けた分を取り戻すために、さらにギャンブルへの欲求が強まって続けてしまいます。

そうして、ギャンブルを繰り返していくと脳はドーパミンに慣れていき少量では快感を得られなくなります。
そのため、さらにドーパミンの分泌を求めて大金を賭けたり、難易度の高いギャンブルに挑戦しようとします。
それがギャンブル依存症がどんどんと深刻な状況になる理由です。

それに、このときドーパミンの分泌量が増える代わりに、感情のコントロールをするセロトニンの分泌量が減っています。
そのため、ギャンブルで得られる快感や、やっていない時に感じる欲求が強くなっていきます。

この病気の厄介なところは、まさにギャンブルをする度に症状が進行していくことです。
ギャンブルにどっぷりとのめり込んでしまえば、多額の借金を抱える恐れがあります。
そうなれば、もはや行き着く先は破滅です。
自己破産をしようとしても、ギャンブルでつくった借金というのは免責不許可事由に該当します。
ですから、借金の返済から逃れることは難しいです。
それで自殺を図る人もいます。

病気であれば治療できるのではないかと思うでしょうが、症状の改善はできても完治はしないものと思ったほうが良いです。
なぜなら、ギャンブルをした時に得られた快感というのは、脳に刷り込まれてしまうと消し去ることが困難だからです。
たとえ10年、20年とギャンブルから遠ざかっていたとしても、再開した途端に元の状態になってしまいます。

完治しないのであればどうしようもないのかというと、ギャンブルから手を引く治療をすれば日常生活を守れます。
治療で必要となるのは、患者が病気であることを認めることです。
病気と入っても、風邪や癌とは違いますから、患者が自分が病気だと認識しにくい病気です。
それ故に、自覚できずに症状がどんどんと進行してしまうことが多いです。
もし、患者自身が病気であることを認めていなければ、いくら医療機関につれていったところで治療の成果がでにくくなるでしょう。

それから、家族も正しい知識を持つことが必要です。
ギャンブル依存症に関する正しい知識を持たないと、適切なサポートができません。
たとえば、お金を言われるがままに出してしまうといったことは、治療の妨げになります。
家族が何をするべきかを知っていれば、そういったことを防げます。

それでは、治療ではどんなことをしていくのかというと、認知行動療法や自分の抱えている問題を見つめるミーティングなどをしつつ、ギャンブルとの関わりを絶ちます。
また治療薬というのはないのですが、抗うつ薬や精神安定薬などを摂取することで心の安定を図ることもあります。
通院での治療では回復しなさそうであれば、入院もします。
入院では、数ヶ月程度世間と離れることで、ギャンブルのない生活に慣れていきます。
入院中は認知行動療法ややミーティングに加えて、患者同士のレクリエーションなどをしていくことでこれからの自分の人生を見つめ直していきます。